2013年03月18日

[ 夏目漱石 ] <収録作品は『こころ』などです> 夏目漱石全集(8)(ショップ:楽天ブックス)



■目次
こころ/道草


■青空文庫から『こころ』を一部抜粋
 先生と話していた私は、ふと先生がわざわざ注意してくれた銀杏(いちょう)の大樹(たいじゅ)を眼(め)の前に想(おも)い浮かべた。勘定してみると、先生が毎月例(まいげつれい)として墓参に行く日が、それからちょうど三日目に当っていた。その三日目は私の課業が午(ひる)で終(お)える楽な日であった。私は先生に向かってこういった。
「先生雑司ヶ谷(ぞうしがや)の銀杏はもう散ってしまったでしょうか」
「まだ空坊主(からぼうず)にはならないでしょう」
 先生はそう答えながら私の顔を見守った。そうしてそこからしばし眼を離さなかった。私はすぐいった。
「今度お墓参(はかまい)りにいらっしゃる時にお伴(とも)をしても宜(よ)ござんすか。私は先生といっしょにあすこいらが散歩してみたい」
「私は墓参りに行くんで、散歩に行くんじゃないですよ」
「しかしついでに散歩をなすったらちょうど好(い)いじゃありませんか」


■『こころ』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。
タグ:夏目漱石
posted by 62646 at 15:54| 小説 | 更新情報をチェックする
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